「61位指名」とも呼ばれるドラフト外選手の隆盛と選手育成の今

もしドラフトの夜に名前を呼ばれなかったとしても、もはやそれは「死の鐘」ではない。アレックス・カルーソとダンカン・ロビンソンがファイナルで見せたように、NBAチームは以前にも増してドラフトの後にこそ、人材発掘にこれまで以上に価値を見いだしている。

「A big photo file of Alex Caruso resurfaces」(En24 news)

レブロン・ジェームスは2019-2020シーズン、NBAにおける最も効果的な2人組のコンビネーションの半分を占めていた。この事実には誰も驚かない。なぜなら、結局のところ、彼が世界最高の選手だからだ。

しかし、もっと驚くべきことは、そのデュオのもう一人だ。2016年にドラフト外となったアレックス・カルーソとレブロンがデュオを組んだ時、レイカーズは100ポゼッションあたり18.6点のスコアで相手を上回り、少なくとも400分以上プレイした864人のデュオの組み合わせの中で、最高の数字をマークした。レブロンの長いキャリアの中で、どんな1巡目指名選手でも将来の殿堂入り選手でも、このような効率的なペアとなったチームメイトは他にいなかった

「Lakers Slow Portland Offense Again in 116-108 Victory」(Spectrum News1)

そしてファイナルでは、レイカーズが優勝を決めたゲーム6で勝利の火つけ役となったのが、カルーソの先発起用だった。カルーソとダンカン・ロビンソンは共にファイナルで先発出場。セルティックスのダニエル・タイスとラプターズのフレッド・バンブリートも、重要な局面でのクラッチパフォーマンスで称賛の的となった。サンダーのルーゲンツ・ドルツは、ほぼ一人でロケッツを退けてしまうのではないかというところまでロケッツを追い詰め、プレイオフの伝説となった。

ドラフト外選手のここまでの躍進は、現代のNBAの一つのトレンドだ。2019-2020シーズンのレギュラーシーズンでは、NBAタイ記録となる実に136人のドラフト外選手が少なくとも1試合に出場し、チーム数と出場試合数を調整すると、これまでで最もインパクトのある成果だった。

2019-2020年のポストシーズンは、最終的には例年のようにスーパースターの価値を示すものとなった。1位指名選手であるレブロンとアンソニー・デイビスがレイカーズのタイトル獲得をリードした。しかし、彼らはプレイオフのスポットライトを浴びて大きな一歩を踏み出すカルーソのようなプレイヤーなしではチャンピオンシップを獲得できていなかった可能性はあるだろう。マーベリックスでは、プレイオフ出場時間数で歴代トップ5の選手のうち、3人はドラフトされていない。同様に、ラプターズはトップ10のうち4人が、ジャズはトップ10のうち3人が、そしてヒートはトップ10のうち3人がドラフト外選手だ。

過去と比較して、プレイオフでより長くプレイし、より良くプレイしたドラフト外の選手たちに、リーグ全体が注目したに違いない。何年にもわたる根拠により、多くのチームのスタッフやエージェントがこれに完全に同意する。ドラフト外というトレンドは、来季以降も必ず続いていくことだろう

あるエージェントはこう話す。「ヒートは東の第5シードだったにもかかわらず、またドラフト外選手が何人もいた中でファイナルに進出した。頭の良いチームなら誰でもこう考える。『なぜダンカン・ロビンソンと契約しなかったのか?』」。

■ドラフト外選手が増加する最大の理由は「需要と共有」

ドラフト外選手の増加の最も明白な理由の一つは、需要と供給である。2011-2012シーズンには、アクティブなロスターが13人に拡大され、2017-2018シーズンには、NBAとGリーグのロスター間を自由に行き来することが許されている「2ウェイ契約」の導入により2人の枠が増やされた。10年前と比較すると、現在では毎シーズン約100人ほど、より多くのNBA選手がプレイできることになる。しかし、ドラフトの規模は同じで、上限は60人まで。増えた分の選手たちのほとんどは、ドラフト外からのスタートとなる。

NBAのドラフトは、1988年に7ラウンドから3ラウンドに縮小され、翌年の1989年には現在の標準的な2ラウンドになった。1987-1988シーズンに登場したNBA選手のうち、ドラフト外となったのは1%未満だった。しかし、ドラフトの枠が縮小されたことで、ドラフト外選手の割合は急速に上昇し、1990年には5%、1993年には10%、1997年には15%を超えた。その後の20年間はこの範囲内で推移しましたが、2ウェイ契約が導入されたことで25%を超えるところまでこの数字はさらに上昇した

このグラフは、合併後の各シーズンの少なくとも1試合に出場したドラフト外選手の数を示したもので、2ウェイ契約が導入されたシーズンは赤く塗られている。

シーズンごとのドラフト外選手の数

「There’s Never Been a Better Time to Go Undrafted」(The Ringer)

これらのドラフト外選手は、ただ最後の枠を埋めるためだけの選手ではない。少なくとも20試合に出場するドラフト外選手の数は全体の数ほど急には増えていないが、2019-2020シーズンは短縮シーズンとなったにもかかわらず、記録を更新した(20試合以上の出場を果たした選手は77人)。

選手たちにとっては、最初は30チームから見放されていた選手たちにセカンドチャンスが与えられるようになったことを意味し、チームにとっては、より多くのNBA入りを希望する選手のためにより高額なサラリーが準備されるようになったことも意味している。2018-2019シーズンには、2ウェイ契約の選手は基本給77,250ドル(約780万円)に加えて、NBAのロスターで過ごした日数分の追加の給与を得ていたが、Gリーグの基本給は35,000ドル(約350万円)だった。チームにとっては、チームに貢献する潜在的な力を秘めた選手のプールを深めながら、比較的安価にローテーションを埋められるようになった

NBAが2ウェイ契約を導入してから、われわれの視野は広くなった」と、あるNBAチームの人事担当者は語る。「2ウェイ契約の台頭により、ドラフトが終わるとすぐに『2回目のドラフト』が始まる。ドラフト外選手をこれまでとは異なる目で見るようになった」。

最高の「61位指名選手」を探し求めることは、ドラフトのための準備として主要な部分となってきている。実際、ドラフト外の選手とサインすることは、ドラフトとは全く別のプロセスだ。どの選手がドラフト外のルートを辿ることになるのかをじっくり見定めながら、ドラフトに至るまでの数週間でエージェントとつぶさにやりとりをしていく必要がある。

ドラフト外の選手は、大部分がドラフトされる選手の逆の副産物であるところの要素が大きい。ドラフト外選手は、多くの場合、大学でのプレイ経験を持つより成熟した選手であることが多い。「ドラフトは、アップサイドプレイになりつつある。特に1巡目指名はまさにそれだ」と先の人事担当者は話す。「そして、スキルレベルの高い即戦力の選手は、ドラフト外選手の山、2ウェイ契約選手の山へと選り分けられてしまうのだ」。

ドラフトのバイアスを理解するということは、ドラフトの過程でより広い網を張って、隙間をすり抜けていってしまう可能性のある大学の選手を適切に見極めることを意味する。「60人だけをランキングしてはいけない」と別のフロントオフィスは語る。「100人以上は見ておかなければならない。トレーニングキャンプや、Gリーグチームでプレイする可能性のある選手全員のリストを完全に持っているかどうかが大切だ」。

■殿堂入りを果たしたドラフト外選手は少ないが…

歴史上、たった14人の選手だけが、ドラフト外選手として殿堂入りを果たしている。しかし、14人のうちの1人も、最近のスターではない。12人はドラフトがまだ開始されたばかりの1952年かそれ以前にデビューした選手で、13人目は大学でのスキャンダルで何年もリーグから追放されたコニー・ホーキンスで、14人目はモーゼス・マローンだ。

3度のMVPを獲得したモーゼス・マローンは、史上最高のドラフト外選手だが、彼のドラフト外のステータスには大きな注意点がある。彼は高校からABAに直接入り、2つのリーグが合併したタイミングでNBA入りした。彼には元々、NBAチームから伝統的な方法でドラフトされる機会はなかったのだ。

言い換えれば、あらゆるチームはドラフト外で将来の殿堂入り選手をほぼ見つけることはできない、ということだ。(殿堂入りはしていないが、4回の最優秀守備選手賞を獲得したベン・ウォレスは、現代の唯一の例外である。)しかし、2020年の現在、60番目のピックを過ぎても多くのロールプレイヤーを見つけられるようになった。

現代のドラフト外選手のサクセスストーリーは、いくつかあるパターンのどれかに適合する。

シューティングスキルが非常に高い場合
 例:ダンカン・ロビンソン(ヒート)、セス・カリー(マーベリックス)、マット・トーマス(ラプターズ)

見落とされていた海外の逸材の場合
 例:ダニエル・タイス(セルティックス)、ジョー・イングルス(ジャズ)、マキシ・クレーバー(マーベリックス)

超一流ではないが頼りになるリザーブガードの場合
 例:ギャレット・テンプル(ネッツ)、 TJ・マッコネル(ペイサーズ)、フレッド・バンブリート(ラプターズ)

多少サイズが小さいかもしれないが、エネルギッシュなビッグマンの場合
 例:クリス・ブーシェー(ラプターズ)、ジャマイカル・グリーン(クリッパーズ)、クリスチャン・ウッド(ピストンズ)

3&Dのタイプの場合
 例:ドリアン・フィニー=スミス(マーベリックス)、ロイス・オニール(ジャズ)、ロバート・コビントン(今季からブレイザーズ)、ダニュエル・ハウス・ジュニア(ロケッツ)、ウェスリー・マシューズ(バックス)

■重視されるのは「フィット感」

何よりも、ドラフト外選手はロスターに補完的な意味を持たせなければならない。「チームは正しいフィット感を見つけようとする」と、NBAのアシスタントコーチでGリーグのヘッドコーチであるコーディー・トッパートは話す。「時に、潜在能力的に天井が低いと思われる場合でも、フィット感をより重視することがある」。

フィットは、チームメイトと組織の両方の面で考慮される。理想的には、ドラフトからこぼれ落ちても、貴重なローテーションプレイヤーまで育成していくことがある。「私は、ダンカン・ロビンソンは何があっても大成すると思うが、未来はわからない」と、ヒートのGリーグチームでロビンソンをコーチしたネバダ・スミスは話す。「もし彼が彼のプレイを評価していない組織に行ったり、Gリーグの育成プログラムを評価していない組織に行った場合、彼はチャンスを得られるだろうか? 彼の欠点を見て『彼はプレイできない』と彼を見捨てれば、彼が成功することはない。だからこそ、誰が彼らを信じているか、誰が彼らにチャンスを与えるか、そして何が彼らのゲームに合っているかが重要なのだ」。

フィット感がドラフト外選手の成功に非常に重要であるため、スミスは、彼らが2巡目の後半で指名されてしまうよりも、ドラフト外になるほうが良いと訴える。「ドラフトで50〜60位ならば、10人から15人の次の層に入るほうが良いと思う。自分の行きたいところを選ぶことができるしね。私は、それが本当に大きな利点だと思う。確かに、50〜60位でもピックアップされれば『ドラフトされた』と言うことはできる。しかしその場合、1つの狭いスポットに置かれ、それに適応していくという苦労が出てくるんだ」。

ドラフト外の選手を狙うチームは、Gリーグでの育成を優先しているチームのようだ」と先の人事担当者は語る。「彼らは12人のNBA選手、15人のNBA選手を抱えているわけではない。彼らは30人を抱えている。なぜなら、Gリーグの選手は、NBAチームの延長線上にいるからだ」。

もはや賢いチームは、試合における単純な戦略のみで他チームを凌駕することはできない。例えば、野球は近代的な統計による分析を導入した最初のスポーツだと言われており、現在ではどのクラブも統計的な戦略を用い、比較的同じ水準になっています。次の分析における未開の地は「選手の育成」分野であり、賢いチームは選手の才能を最大化することで、他チームとの差別化を図れるのである。NBAにも同じ現象が起こっていると言えるだろう。

■まだまだ伸びしろの多いGリーグとその活用

目の前にぶら下がっていたのは、『よし、スリーポイントシュートを打とう。相手はツーポイントシュートを打っている。私たちは相手よりも頭がいい』というようなものだった。誰もがそれにある程度の理解がある」と先の人事担当者は言う。「今チームは、スポーツ科学や栄養学の分野のように、新たなアドバンテージを見つける必要があるが、現状わかっている確かなことの一つは、チームによるGリーグ活用の非効率性だ」。

10年前、NBAのマイナーリーグ(当時はDリーグと呼ばれていた)には16チームしかなく、4つのチームが1つのNBAの親クラブに所属していた。現在では、Gリーグはその約2倍の28チームに増え、それぞれのチームが1つのNBAの親クラブに所属しており、最も緻密なレベルで選手の育成をコントロールできるようになった。(ナゲッツとブレイザーズのみ、いまだにGリーグチームを持たないでいる。)

私たちの選手育成は、彼らが次のレベルでどのような役割を果たさなければならないかということに非常に基づいていた。必ずしもGリーグのトップスコアラーになりたいとは限らない」と語るトッパートは、現在メンフィス大学でペニー・ハーダウェイの元でアシスタントコーチを務めている。「選手の育成は、私たちが選手にどのような補助的な役割ができるかを考えるよりも、どのポイントにポイントを絞って育成できるかに重きを置いている。どのようにして6人目、7人目の選手になれるように育成できるか。どのようにして限定的な役割にしっかりフィットできるように選手を育成できるか。それらが重要だ」。

コーチングスタッフの数が多ければ多いほど、選手の育成の度合いも高まる。ここでも賢いチームは、近年飛躍的に進歩を遂げている。スミス氏によれば、Gリーグでの最初のシーズンには、彼のチームには有給のアシスタントが1人いるだけで、組織全体におけるコンピューターもたった1台しかなかったという。しかし、最後のシーズンとなった2018-2019シーズンでは、アシスタントコーチ2人、オペレーションマネージャー2人、ビデオ担当1人、ストレングスコーチ1人、インターン3人を擁し、ドラフト外選手がファイナル出場チームで先発できるほどのレベルにまで向上させられるよう、それぞれの役割を果たしていた。

「There’s Never Been a Better Time to Go Undrafted」(The Ringer)

ポストシーズンの間、ドラフト外選手としてダンカン・ロビンソンは最も目覚ましい活躍を遂げていたが、一度FAが始まれば、これから先は別の道を行くことになるかもしれない。昨季、平均18点、7アシスト(レギュラーシーズン+プレイオフ)を記録したラプターズのフレッド・バンブリートも、市場で最も注目される選手の一人となるだろう。

ロビンソンとバンブリートの成功を考えると、ヒートやラプターズ以外のチームも彼らの後に続き、ドラフト外のダイヤの原石を発掘するために、もっと努力していくのは時間の問題だ

結局のところ、2ウェイプレイヤーへの投資は、彼らが比較的薄給であることを考えれば最小限に抑えられたもののように感じる、潜在的な将来における見返りは莫大だ。それは、全てサンプルの量と永続的な投資にかかっている。 「もしあなたが十分な数をトライし、あなたが賢明でサンプルを十分に得られていれば、おそらく誰かで必ずヒットすると数字は物語っている」。

2ウェイ選手のようなドラフト外選手のサクセスストーリーはまた、新しい大学の選手が自分自身の将来に懸けるよう刺激を与え、ドラフト外選手のタレントのプールを増やすことができるようになった。アメリカでは、2ウェイ契約の出現とGリーグの拡大の両方の成功により、多くの選手が母国に滞在し、NBAへの一歩を踏み出すことを望んでいると、アメリカ人選手の獲得を試みるヨーロッパのチームを支援しているスカウトは話す。

『不適格者』となりたくなければ、中国語を勉強したほうがいい」とトッパート氏は話す。「お金を稼ぐためには海外に行くことも選択肢の一つだ。しかし、その逆もまたしかり。42%の確率でコーナースリーが打てれば、母親に家を買ってあげられる。今、それについて考えてみることだ」。

JJ
I Stan Basketball. / Started watching NBA since 2003 / A Big Fan of LeBron & Lakers / An Alumnus of University of Tsukuba / An Editor / A Blogger

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