クリスチャン・ウッドの決して屈しない力

11月、ヒューストン・ロケッツと3年4,100万ドル(約41億円)の契約にサインしたクリスチャン・ウッドの心の中で、ほろ苦い記憶が駆け巡っていた。

Source: “The staying power of Christian Wood: ‘Most guys would fold’”(The Undefeated)

ドラフト外。

複数チームからの解雇。

1試合も出場することなく中国のチームからの解雇。

Gリーグでの長い経験。

それらすべての経験のさなかで、ウッドは自分自身を信じ続けていた。そして今季、ようやくその思いが報われた。

長期契約を結べたことは、私にとって大きな意味を持っていた」。25歳のウッドはインタビューで語った。「この契約は、私がどれだけ努力を重ねてきたか、ミニマム契約や無保証契約から何度もウェイブされていた時代からどれだけ遠くまで来ることができたかを、私に示してくれた。3年4,100万ドルの契約に至るなんて、信じられないことだよ」。

生意気に思われるかもしれないが、私にはこの契約以上価値が自分にあると信じている」。

208cmのセンターであるウッドは、ジェームズ・ハーデンとジョン・ウォールというスター選手を含むロケッツのロスターで1試合あたり平均23.3点、10.8リバウンド、2.0ブロックを記録している(1月8日時点)。シーズン序盤からMIPの候補となっているウッドは、ハーデンの最近のトレード要求の影響を受けているロケッツにあって明るいスポットとなっている。

ロケッツのHC1年目のスティーブン・サイラスは、ウッドが2016-17シーズンにシャーロット・ホーネッツに在籍していた時にアシスタントコーチを務めていたが、ウッドには今のところ「A」の評価をつけるという。

彼は成功を収め始め、何ができるのかを私たちに見せてくれている。そして今、センターのポジションに変化が生まれてきていることは、彼にとって追い風になっている」とサイラスは話す。「シャーロットでは、彼はまだまだ若造だった。でも今、彼はより成熟し、グッドプレイヤーになってきている」。

■ドラフト外選手からジャーニーマンに

ウッドはネバダ大学ラスベガス校の出身で、2年時に1試合平均15.7点、10.0リバウンド、2.7ブロックを記録した後、2015年のNBAドラフトにエントリーした。ESPNは彼が2巡目で指名されると予想していたが、ウッド自身は1巡目の後半にロサンゼルス・レイカーズかメンフィス・グリズリーズに指名される可能性があると考えていた。

ドラフトの夜、ウッドは家族や友人たちとラスベガスのホテルのスイートルームでドラフトパーティーに集まった。しかし、レイカーズとグリズリーズだけでなく、他の28チームも彼を見送ったのだ。ウッドはその夜を、彼の人生の中でも「最悪の夜」の一つと表現した。彼は後に、彼の取り組む姿勢がNBAのチームから疑問視されていたことを知った。当時わずか19歳だったウッドは、自分自身にも疑問を持ち始めてしまった

いつになったらNBAでプレイできるのだろう?』『家族を養っていけるのだろうか?』。そんな疑問ばかりが頭の中にあった暗黒期だった。タフだった」とウッドは漏らす。「でも、私は乗り越えたんだ。苦しい時を乗り越え、私の信仰、私のメンタリティーは『一人残らず叩き潰して、世界中に自分が何者になれるかを示せ』となったんだ」。

ウッドは、2015年にロケッツのサマーリーグでプレーし、プロキャリアをスタートさせた。しかし、ロケッツが彼に契約を提示しなかったため、フィラデルフィア・セブンティシクサーズとミニマム契約を結んだ。ウッドは2015-16シーズンに17試合に出場し、その後はGリーグのデラウェア・エイティセブナーズでシーズンのほとんどを過ごし、平均17.3点、9.4リバウンドを記録した。

翌シーズン、ウッドはホーネッツと契約したが、それは同じことの繰り返しだった。ホーネッツでは13試合に出場したが、Gリーグのグリーンズボロ・スウォームに送られ、平均19.6点、10.1リバウンドを記録した。サイラスは当時、ウッドの可能性を感じていたが、その時はまだまだ成長が必要だという評価だったという。「ウッドが非常に才能のある選手であり、さまざまな可能性を見せてくれた。しかし、彼はまだ若く、プレイに一貫性がなかった」。

“Christian Wood: Chip on His Shoulder”(NBA.com)

2017年にダラス・マーベリックスとフェニックス・サンズのサマーリーグチームでプレーしたウッドは、NBAのオファーを受けられず、中国プロバスケットボールリーグ(CBA)の福建省スタージョンズと契約した。しかし、ウッドの加入から約1カ月後、チームは別の元NBA選手であるマイク・ハリスを獲得したことで、最終的にはシーズン開幕前にウッドを手放した

ウッドは中国でカットされたことで目が覚めたと考えている。

あの時は、人生で最大の試練の時だった」とウッドは語った。「自分にはNBAでプレイするだけの才能があり、実際にプレーできると思っていたのに、スタージョンズにカットされたんだ。彼らは、私の能力が足りないと考えた。彼らは、僕がCBAでプレーする準備ができているとは思っていなかった。それは私にとって少しクレイジーに思えることだったけど、その時に自分の中でスイッチが切り替わったんだ」。

その後、他に選択肢がなかった。その前にも1つのチームからカットされ、中国のチームからもカットされた。でも、NBAでプレイする機会は求めている。だから、チームに所属して、チームのために全力を尽くさないといけない。つまり、Gリーグの選手になるということだ」。

ウッドは2017-18シーズン、エイティセブナーズの一員としてGリーグでプレイし、平均23.3点、10.4リバウンドを記録した。しかし、シクサーズでは一度も試合に出場していない。2018-19シーズンには、ミルウォーキー・バックスのGリーグチームであるウィスコンシン・ハードで29.3点、14.1リバウンドを平均して輝きを放った。しかし、ウッドはバックスではわずか13試合の出場に留まり、最終的にはウェイブされた。もし、ウッドが2度のMVPを誇るヤニス・アデトクンポとタッグを組んでいたらどうなっていただろうかと考えると恐ろしい。

『なぜ自分がフロアに立てないのか、このチームでプレイするためには何をしなければならないのか』ということを考えた。当時、バックスはリーグNo.1のチームだったことは理解している。でも、私はあんなに素晴らしい数字を出していたんだ」とウッドは話す。

2019年3月、ニューオーリンズ・ペリカンズがウッドに可能性を見いだし、当時のHCであったアルビン・ジェントリーがウッドにプレイの機会を与えたことで、自らのキャリアが変わっていったとウッドは語る。ウッドはペリカンズで8試合に出場し、平均16.9点、7.9リバウンドを記録した。その後、ペリカンズのGMに就任したデビッド・グリフィンは、2019年7月にFAのガード、JJ・レディックと契約するためにウッドを手放す決断を下したが、4度目のカットを受けたにもかかわらず、ウッドは「ブレイク寸前」だと自信を持っていた

たいていの選手は、チームからウェイブされた2回目、3回目の後で、『自分には無理だ』と言ってしまうか、心が折れてしまうだろう。海外のチームからカットされたら、諦めてしまうかもしれない。でも、その次はどうするのか? 私が言いたいのは、『立ち直る力と諦めない気持ちを持て』ということだ。そこまで来れたのだから。自分自身に賭けたのだから。ただ自分自身に賭け続けるんだ」。

“The staying power of Christian Wood: ‘Most guys would fold’”(The Undefeated)

■ブレイクの時

元デトロイト・ピストンズのアシスタントGMだったマリク・ローズはウッドの才能を見いだしていたが、2018-19シーズン以降、ウッドはコート外で自身の評判を下げる小さなことを続けていた。ローズは主なものとして、ウッドの未熟さ時間の守れなさ、フォーカスの問題を挙げた。

それは決して意地悪で行っていたことではない。彼に原因があった。練習に遅刻するバスに遅刻するプレイに集中できないワークアウトを欠席する。若い選手、特にミレニアル世代の選手には、厳しく指導するようにしている。21、22歳の時を思い出すと、私も最善の決断ができていなかった」と、現在リーグのバスケットボール部門の副代表を務めるローズは語る。

2019年7月、ローズとピストンズはウッドをオフ・ウェイバーで獲得した。彼らがウッドをピックアップした唯一のNBAチームだったと、ある情報筋は語った。ウッドは結局、ケガの問題を抱えていたベテランガードのジョー・ジョンソンを破り、2019-20シーズンのピストンズのロスターの最後の一枠を獲得した。

ピストンズのドウェイン・ケイシーHCは、フロアの両サイドでのウッドのゲームにすぐに惚れ込み、彼をチームに引き込んだ。ウッドの成長の大部分は、過ちを犯したり試合や練習でミスをしたりした時にケイシーの辛抱強い愛情の恩恵を受けている。

ウッドに才能があることは知っている。彼が素晴らしい選手になるように教えようとしているんだ」と、ケイシーは昨季、デトロイトで記者団に対して語った。「それは、正しいことを行うこと、そして、自分自身を正しい道筋へと導くことだ。もし彼がそうできていたなら、彼は非常に才能のある若者だから、おそらく異なる5つものチームでプレイすることなどなかったはずだ。きっと報われるはずだ」。

ウッドも、自身のブレイクにケイシーが寄与したことを認めている。

「彼はいつも私を信頼してくれていた。当時、私はいつもアンドレ・ドラモンドやブレイク・グリフィンの後ろでプレイしていたんだ。でもケイシーは、『彼には才能がある。システムの中で彼にチャンスを与え、彼を正しい状態にしなければならない』と言ってくれていた。そして実際に、彼はそうしてくれていたんだ」とウッドは語った。

ウッドの力強いプレイにより、このオフシーズンのFAで彼自身を魅力的な存在にした。ピストンズもウッドとの再契約に興味を持っていたが、NBAのある情報筋によると、ロケッツはもっと良いオファーをしたという。11月20日、ウッドはロケッツとのサイン&トレードに合意した。

この契約により、新しい契約の1年目のサラリーは、彼がそれまでに稼いだ430万ドルを大きく上回る1,300万ドルとなった。また、サイラスと再びチームを組むこと、そして、2人のオールスターガードとプレイする特別な機会を得ることにもなった。

ジェームズ(・ハーデン)とジョン(・ウォール)と一緒にプレイするのを気に入っている」とウッドは語る。「私たちは素晴らしい関係だよ。ジェームズはリーグでもトップクラスのピックアンドロールガードだ。そして私はリーグでもトップクラスのピックアンドロールビッグマンだと思う。私たち2人が共にプレイすれば、特にゲーム終盤の状況では、止めるのが難しいデュオになれる。ジョンが完全復活した今のプレイを続けられれば、私たちはウエストで負かすことのできないチームになるだろう」。

しばらく時間はかかったが、ウッドはようやくNBAでの安定を手に入れた。しかし、彼がこれで満足するということは決してない。彼は今、ロスターの座にしがみつくのではなく、NBAのスターにならなければならないというプレッシャーにさらされている。

「彼には証明しなければならないことがたくさんある」とサイラスは言う。「チームとして証明しなければならないこともたくさんある。でも、彼は良いスタートを切ったよ」とサイラスは微笑む。

ウッドは今シーズン、オールスターになること、MIPを獲得すること、そして27歳で迎える次のFAでまた新たな契約を得ることを目標としている。何よりも、彼はまだ肩の荷が下りていない。

新たなスタートを切るにあたり、身の引き締まる思いこれは再出発だ。本当に感謝している」。■

“Photo Gallery: Rockets Vs. Lakers 1/10/2021”(NBA.com)
JJ
I Stan Basketball. / Started watching NBA since 2003 / A Big Fan of LeBron & Lakers / An Alumnus of University of Tsukuba / An Editor / A Blogger

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