ファンの有無は今季のNBAの試合にどれほど影響を与えているのか?

現在、NBAの14チームがファンの観戦を許可しており、ファンの存在がホームコートアドバンテージにインパクトを与えていることを示す証拠も出てきている。しかし、ファンを呼び込むことの競争的な側面にフォーカスする人もいれば、依然として健康上のリスクを警戒している人もいる。

Source: “How Much Are Fans—or a Lack Thereof—Affecting NBA Games This Season?”(THE RINGER)

ディアンドレ・エイトンはフェイクの観客の歓声が嫌いだ。それは、彼にとっては何にもならない。だから、月曜日(2月23日)の夜のブレイザーズ戦、エイトンがクリス・ポールからのロブをフィニッシュした後、彼が耳にした歓声は、彼にとってまるで音楽のようだった。3,000人を超える実際の観客の歓声がフェニックス・サンズ・アリーナの全体に響き渡った。

エイトンはその夜、26分の出場で19点、5リバウンド、2ブロック、1スティールを挙げ、+/-ではシーズンハイとなる+25を記録した。試合後にエイトンは、自身のパフォーマンスが、サンズが2月16日からホームゲームの際にアリーナへの入場を許可するようになった数千人のファンから受けたエネルギーによるものだったと語った。

“Ayton debuts with thunderous slam, Suns coast”(FOX SPORTS)

ファンがいなくて寂しかったよ」とエイトンは言った。「ファンが近くにいるのを見るのは素晴らしいこと。私たちは彼らのためにプレイしているから、彼らが自分の名前を叫んでいるのを聞くのが恋しかった。たとえ、相手チームのファンが自分に向かって叫んでいたとしても、そのすべてが恋しかったんだ」。

フロアの反対側では、ブレイザーズのHC、テリー・ストッツは、歓声とその歓声がもたらす試合への影響に、今シーズン初めて気がついたと語った。「敵地では、ファンの数は少なかった。だから、ファンがもたらすインパクトについてそこまで思いが及んでいなかった。特に、歓声を流していたアリーナではね」とストッツは話す。「今晩は、私が歓声に容易に気づけた初めての時だった」。

今週(2月14日〜20日)の時点で、NBAの14チームが、ファンが会場の中に入ることを許可している。その数は、シーズン開始と共にファンの入場を許可していたキャバリアーズ、ロケッツ、マジック、ペリカンズ、ジャズの5チームから上昇しており、この数字の伸びは続いていく可能性がある。現在、1つのアリーナで許可されているファンの数の最大数はロケッツの4,500人だが、ペイサーズ(1月25日から少なくとも1,000人のファンの入場を許可している)のようなチームは、地元のレギュレーションに従ってキャパシティーを増やしていくと述べている。

典型的なNBAのシーズンでは、ホームでプレイするチームにアドバンテージがあると考えられており、数字もそれを裏づけている。2000年から2017年までの間、ホームチームの勝率は59.9%で、過去8シーズンはすべてホームチームの勝率が60%を下回っていたが、この数字がアウェイチームに有利に傾いたことは一度もなかった。しかし、今年はホームコートアドバンテージの影響がより複雑になっている。

全体では、ホームチームの勝率は251-217で53.6%と、どのシーズンと比較しても最低の勝率となる。ESPNのケビン・ペルトンが指摘したように、ファンがいないアリーナでのホームチームは、それよりもさらに低い52%しか勝利していない。しかし、火曜日(2月23日)の試合を通じ、ファンがいたホームチームの勝率は56%で、昨シーズンにバブルの外でホームチームが持っていた勝率55.1%をわずかに上回っている。そして過去2日間(2月24日・25日)、スタンドにファンがいたホームチームは9勝2敗となっている。

これらの差分は小さく見えるかもしれないが、シーズンの機微を直接経験したコーチや選手にとっては、特に数千人規模のファンの数が急増するアリーナでは顕著なものになってきている。しかし、より多くのファンがアリーナに入るとして、このパンデミックの中で建物に多くの人々の入場を許可することに伴う健康上のリスクと、ファンの入場がもたらす勝敗に関するアドバンテージのいくらかの緊張を生み出し始めている。

ファンの存在は私たちにとってアドバンテージになっている」と、サンズのHCであるモンティ・ウィリアムズは述べた。「開幕直後は、グリズリーズ、ジャズ、ロケッツに遠征に行く際は、アリーナの中にファンがいた彼らにアドバンテージを見いだせた。そして今、私たちが同じようにファンがいることで、それを感じられるようになった」。

もし、ホームコートアドバンテージによってチームが得られる競争上の優位性が得られるかどうかについて今まで疑問に思ったことがあるならば、日曜日の夜(2月22日)にクリッパーズのオーナー、スティーブ・バルマーのパフォーマンスを見たほうが良い。ネッツとクリッパーズの対戦では、ファンのいないステープルズ・センターで、バルマーはゴールの後ろで一人で座り、フリースローラインに立つディアンドレ・ジョーダンを妨害しようと、手を叩き始めた。他の誰もそれに加わることはなく、彼の試みはまったく機能しなかった。ジョーダンは2本中1本を決め、ネッツは4点差で勝利した。

“Nets’ Late-Game Heroics Make Clippers Owner Squirm in His Seat”(heavy.)

クリッパーズとレイカーズはシーズン中はファンがおらず、両チーム共にホームであるステイプルズ・センターよりもアウェイの試合のほうが良い成績を上げている。特にレイカーズは、アウェイを13勝4敗、ホームを9勝7敗としている。通常のシーズンでは、レイカーズの試合はコートの上でもコートの外でもまさにパフォーマンスアートのようで、劇場の照明、コートサイドに座っている著名人、ゲーム内のエンターテインメントは、ステイプルズ・センターが満員の時にのみ全てを感じられる特別な経験を作り出す。しかし、今シーズンはそのオーラが消えてしまっている。

レイカーズのDJ、ジェレミー・ルーシュは、まるでアリーナの中にファンがいるかのようにDJを続けなければならなかった。彼は先月、その状況を「誰も入れないスクリメージのよう」と表現した。そして、そのバラバラの雰囲気を感じているのは彼だけではない。レイカーズの控えであるジャレッド・ダドリーは、ステイプルズ・センターとマジソン・スクエア・ガーデンはファンがいない中でプレイするには最も奇妙なアリーナだと選手たちは信じていると述べた。そして彼は最近、レイカーズのホームでのプレイの悪さ(4連敗)をその事実と結びつけることに何の抵抗感もなかった。

だから私たちはロードでより良いプレイをするのかもね」とダドリーは語る。「正直に言えば、グリズリーズといった敵地では、観客がそもそもいない。しかし、ステイプルズ・センターの場合は、中に入るとある種の特別なエネルギーがある。MSGもそうだ。私たちにとっては、ホームで試合をするということは、その特別なエネルギーを受けるということなんだ。だから、それがないことに苦労しているんだ」。

レブロン・ジェームスは、ファンの存在が彼のプレイにとってどれだけ重要であるかについて話すことをためらわない。今シーズンの彼の負荷(彼は1試合あたりの出場時間がチーム最高の35分を平均しており、欠場もしていない)についての疑問が残るように、チームの他のメンバーが短いオフシーズンと凝縮されたスケジュールのために疲労をあらわにしていても、もしホームでプレイすることによるファンの存在という追加のエネルギーがあれば、コート上での支えになるのに役立つ可能性があるだろう。

グリズリーズのコーチ、テイラー・ジェンキンスは、チームが2月4日にアリーナを11パーセントのキャパシティーまで満たし始めた後、「試合中、アリーナからエネルギーを感じられた」と語った。「後半から私たちが猛攻を仕掛けた時、ファンは私たちの心を鼓舞してくれた。最高だったよ」。

数字をよく見てみると、今シーズンのファンに関連する興味深い傾向がいくつか見えてくる。レイカーズ、クリッパーズ、スパーズ、ブルズ(いずれもホームゲームにファンがいなかった)は、ホームでの記録よりもロードでの記録のほうが優れている。そして、今シーズンのサンプルサイズはまだ小さいが、コーチや選手たちは、ファンのいないアリーナと観客のいるアリーナの間を行き来する際に、その違いに気づいているようだ。

実際に、スピーカーで再生している音楽だけではなく、それとは異なるエネルギーがあるかないかは、かつてそうであった記憶を思い起こさせてくれる」。

もちろん、アリーナにファンが入ることは、スタッフ、選手、ファン自身にCOVID-19の感染リスクを増加させる。シーズンが始まる前に、NBAはどのくらいのファンがアリーナに入ることが許されるかについてのルールを明確に設けず、代わりに州や郡の当局の決定に委ねることを選択した。マーク・ガソルのような何人かの選手にとっては、これは腑に落ちなかった。シーズンが開始する前に、ガソルは全てのチームが最も安全なルートを辿れるような、今シーズンのファンに関する包括的なポリシーがなぜ存在し得ないのかについて、声に出して疑問を呈していた。しかし、今シーズンも半ばを過ぎようとしている今、チームはこの現実を受け入れ、競争上の意味合いを考え始めている。

“Marc Gasol says ‘frustrating’ season fuelled his weight loss”(Yahoo! Sports)

ファンの入場を許可していないフランチャイズのあるフロントオフィスのスタッフによると、他のチームが得ている微妙な優位性についてチーム内で議論が行われており、また、もし観客動員が増え続けていれば、プレイオフまでに優位性がさらに顕著になる可能性があるという。それは同時に、今シーズンはポストシーズンではシードは重要ではないという考え方が信憑性に欠けるという理由にもなる。ファンとの試合数が1試合減るか、あるいはその逆の場合は、チームが前進するかシーズンが終了するかの違いになるかもしれない。

私はホームコートアドバンテージが競争上の優位性になることは間違いないと思う」と、ナゲッツのHCのマイク・マローンは言った。「私たちのアリーナの中は時々不気味なほど静か。そこには誰もいない。奇妙という言葉が正しいかどうかはわからないが、確かにこれまでと違う。私は、ある時点でファンが戻ってくることを期待している。なぜなら、ファンは私たちの成功の大部分を占めているからだ」。

おそらく、ジャズほどアリーナに観客がいることで恩恵を被っているチームは他にいないだろう。ジャズは26勝6敗を記録しており、ホーム・アウェイ関係なくプレイするベストチームの一つだろう。だが、ジャズはホームでめっぽう強い。彼らはホームでNBAトップの15勝2敗を誇るが、彼らは事実上、ユタでプレイする際に戦略的に良いチームになっていると言える。

アリーナの中には、より多くのエネルギーがある」と、ホーネッツのコーチ、ジェームス・ボレゴは、チームが月曜日(2月23日)の夜にユタでジャズに負けた後に言った。「私たちのアリーナではそのようには感じられない。私はそれを断言できる。願わくば、私たちもアリーナにファンを呼び戻せるかもしれない」。

シーズン開始時には1,900人のファンしか入れなかったジャズだが、2月2日には4,000人近くに急増した。それ以来、ジャズはホームゲームに負けたことがない。

“Utah Jazz Guard Jordan Clarkson Says There Is ‘One Goal, One Reason’ To Play In NBA Restart”(KSL Sports.com)

コーチや選手の中には、ファンが試合を動かすことができるという考えを信じていない人もいる。マジックは、例えば、シーズン開始以来3,500人から4,400人のファンの入場を許可しているにもかかわらず、ホームでは8勝9敗と負け越しており、スティーブ・クリフォードHCは、ファンがいることは良いことだが、それは16,000人の前でプレイするようなものではないと述べている。「少し奇妙に聞こえるかもしれないが、一度コートに出れば、集中しているので気にならない」とテレンス・ロスは付け加えた。

ウィザーズはまだワシントンでファンを入れていない、コーチのスコット・ブルックスは、選手たちが自分たち自身でエネルギーを生み出せていることに喜びつつ驚いていると述べた。そして、選手たち、特にベンチの選手たちは、ファンの不在を補う責任を感じていると言っている。しかし、そうは言っても、ベンチの選手たちは何千人もの人々からの声援を再現することはできない。

ネッツのジョー・ハリスが語ったように、ネッツが今シーズン初めてファンを会場に入れたとき、ブルックリンが許可したたった324人のファンであっても、応援してくれる人がいるということは、誰もいないよりはるかに良いことなのだ。

「私たちには彼らの声がしっかり聞こえている」と、スティーブ・ナッシュHCは、チームがキングスに127-118で勝利した後に言った。「18,000人とは言わないが、アリーナの中にファンがいるのは良いことだ。そのおかげで活気が少しでも生まれてきたと思ったよ」。

ナッシュHCは、特にコート内外における非常に困難なシーズンの中で、ファンが選手たちに元気を与えられると信じている。しかし、困難なシーズンである理由を無視することはできないし、ナッシュHCは、この全体の状況を強調する現実にも言及している。ファンをアリーナに招待することは、それが安全に行うことができる場合にのみ起こるべきである、と。■

JJ
I Stan Basketball. / Started watching NBA since 2003 / A Big Fan of LeBron & Lakers / An Alumnus of University of Tsukuba / An Editor / A Blogger

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