ラッセル・ウエストブルックはトリプルダブルを簡単に達成して見せる。しかし、決して簡単じゃない。

ワシントン・ウィザーズのガード、ラッセル・ウエストブルックは、直近5シーズンで4回目となる平均トリプルダブルを達成しようとしており(※5月3日に達成)、それはほとんど日常的なことのように思える。では、なぜ他の選手は同じようにトリプルダブルを達成しないのだろうか。

Source: “Russell Westbrook Makes Triple-Doubles Look Easy. They’re Not.”(The New York Times)

ラッセル・ウエストブルックとスコット・ブルックスHCは、日曜日の深夜に電話で打ち合わせをした。ワシントン・ウィザーズが8連勝し、月曜日の夜にはバック・トゥ・バックゲームの2戦目としてサンアントニオ・スパーズとの対戦が迫っており、ウエストブルックはブルックスHCと共に特別な戦略を練りたいと考えていた。

その数カ月前、ウィザーズが新型コロナウイルス感染症の拡大により6試合連続で延期になったこともあった。しかし、彼らの巻き返しは劇的で、ウエストブルックのプレイはオクラホマシティー・サンダー時代の全盛期を彷彿とさせるほどだったため、ブルックスHCはスターガードの真剣なトーンの話をこう遮らずにはいられなかった。

ブルックスHCは語る。「私は彼にこう言ったんだ。『リバウンドをもっと取りにいかないと。たった5本だけで満足か?』。発破をかけたんだ」。

日曜日のクリーブランド・キャバリアーズ戦で、ウエストブルックが36分間の出場で14点、11アシストを奪ったのに対して5リバウンドだけだったのは、まさに異常事態だった。ウエストブルックは、それまでの10試合では9試合、15試合では13試合、20試合では16試合で、得点・アシスト・リバウンドのいずれも二桁に達していたからだ。

ウエストブルックは、32歳にしてウィザーズの一員としての最初のシーズンを迎えた。平均21.8得点、11.0リバウンド、11.0アシストを記録し、トリプルダブルはリーグ最多の29回。キャリア通算では175回目に到達した。あと7回達成できれば、オスカー・ロバートソンを抜いて史上最多に躍り出ることになる(いずれも4月28日時点)。

注目したいのは、直近5年間で4度目の平均10リバウンド超えを目指しているウエストブルックの身長が6フィート3インチ(190cm)であることだ。

The New York Timesの公式なスタンスとしては、ウエストブルックが近々達成するであろう偉業は、あのサイズでの容赦ないリバウンドによって心から祝福されるべきだと考えているが、Big O(オスカー・ロバートソンの愛称)を超えたときにどれほどのファンファーレが待っているのかは何とも言えない。「トリプル・ダブル」という言葉が流行したのは1980年代に入ってからで、この記録は当時のロバートソンが認識していたものではなかった。

もう一つ、やっかいなことがある。私(マーク・スタイン)が28シーズンにわたってNBAをフルタイムで取材してきた中で、ウエストブルックはアレン・アイバーソンと並んで、最も人気のある選手である。一方で、ウエストブルックのボールを支配するスタイル、気まぐれなジャンプショット、高いターンオーバー率、時折見せる無愛想な態度、そして何よりも優勝経験がないことから、彼を称賛する人よりも批判する人を見つける方が簡単な場合が多いのだ。

“Russell Westbrook Makes Triple-Doubles Look Easy. They’re Not.”(The New York Times)

ウエストブルックがロバートソンに迫っていくにつれ、トリプルダブルが現代バスケで頻繁に起こり得ることから、トリプルダブルを空虚なカロリーと見なす傾向も強まっている(例:3月17日、ウエストブルックはその日にトリプルダブルを記録した6人の選手のうちの1人だった)。特に、ウエストブルックのトリプルダブルは、他の選手にはない形でディスカウントされる傾向があり、月曜日のスパーズとのオーバータイムでの敗戦後、彼は記者とのビデオセッションでそのことを話していた。

ウエストブルックは言う。「私が思うに、非常に興味深いのは、私がしていることが役に立たないと思われていることだ」。

同僚のティム・レイノルズ(AP)の最近の記事によると、2011-12シーズンのレギュラーシーズンでは、トリプルダブルはリーグ全体で18回しかなかった。しかし、今シーズンはすでに100回を超えており、実に5年連続となる。これは今日のNBAにおけるオフェンス面でのさまざまなアドバンテージを示している。プレイのペースが速くなったことでポゼッションが増え、統計的な機会も増え、ディフェンダーへの制限がオフェンスの自由度を高めるように設計されるようになった。また、3ポイントシュートの試投率も高くなり、得点率の向上、ロングリバウンドの増加にもつながっている。これに対し、3ポイントシュートの革命に抵抗感のあるオールドスクールな人々は、最近のボックススコアに見られるような派手な数字を嘲笑する傾向があるのだ。

しかし、ここで私は改めて、ウエストブルックの身長が190cmであることについて、繰り返し強調したいと思う。190cmのサイズ以下の選手で、シーズン平均で10リバウンド以上を記録したのは、リーグ史上で彼だけなのだ。

190cmではとりわけ難しい」と語るのは、1982-83シーズンから1993-94シーズンにかけて43回のトリプルダブルを達成し、「Fat」の愛称で親しまれたラファイエット・レバーだ。

レバーは、ウエストブルックの挑戦を誰よりもよく理解している。1986-87シーズン、マジック・ジョンソンやラリー・バードを抑えて、リーグ最多の16トリプルダブルを達成した190cm・78kgのガードである彼には、ウエストブルックのような爆発力はなかった。

ラッセルは、どの時期の私よりも運動能力が高い」。レバーは電話インタビューで語った。「おそらく、彼は生まれた時から運動能力が私よりも優っていただろう」。

レバーは、高校時代に身長190cm以上の選手がいないチームでプレイしていたこともあり、リバウンドの能力が非常に高かった。実際、レバーは今でも歴代のトリプルダブルのランキングの10位にランクされている。ロバートソンの引退から5年後にマジック・ジョンソンがレイカーズに加入してからトリプルダブルが注目され話題になるようになった。しかし、1980年代にNBAに夢中になっていた高校時代の友人たちの間では、トリプルダブルはマジックやバードと同じようにレバーから連想された。

レバーは、1984-85シーズンから1989-90シーズンまでの6年間、デンバー・ナゲッツで43回のトリプルダブルを達成したが、ウエストブルックのように、必ずしも評価されていたわけではないチームの原動力の一つだった。当時のナゲッツは、ダグ・モーHCの下で行われていた自由奔放なスタイルと、そのゲームが生み出すワイルドなスコアやスタッツが問題視されていた。

“Russell Westbrook Makes Triple-Doubles Look Easy. They’re Not.”(The New York Times)

火曜日(4月27日)に行われた試合では、30チーム中13チームがシュート全体の40%以上を3ポイントシュートを放っていたが、このようなリーグでは、統計的な数値を過大評価することが常態化している。ウエストブルックのサンダーでの晩年には、スタッツの水増しが叫ばれるようになった。また、彼のトリプルダブルへの意識の高さとそれを追い求める衝動は、ウエストブルック世代にとってのもう一つの利点と考えられている。しかしレバーは、ウエストブルックのリバウンド奪取の一貫性を実現することは、見た目よりもはるかに難しいと主張する

至難の業さ。誰もができることではないから」とレバーは言う。

ウエストブルックは、オーバータイムの末に146-143で敗れたスパーズ戦でウィザーズの連勝が8でストップした後、同様の発言をした。26本中9本成功の低調な確率とはいえ、22点、13リバウンド、14アシストを記録したトリプルダブルについて聞かれたウエストブルックは、次のように答えた。「正直なところ、自分のような選手はいないと思っている。そして、もし人々がトリプルダブルを当然のことと考えたいのであれば、それは残念なことだ。もし皆ができることであれば、皆やっていると思うんだ」。

その論理に反論するのは難しいが、確かに多くの選手が挑戦している。2016-17シーズン、ウエストブルックは、1961-62シーズンのロバートソン以来、シーズンを通して平均トリプルダブルを達成した初めての選手となった。この偉業により、47勝35敗のサンダーで活躍したウエストブルックは、1981-82シーズンのモーゼス・マローン以来、50勝以下のチームから初めてMVPを受賞した。

“The Morning Brief: Travel Ban, Syria and Russell Westbrook‬”(TIME)

ウエストブルックは最近の好調の波に乗り、直近5シーズンで4回目となる平均トリプルダブルを達成する見込みで(※5月3日に達成)、理論的にはMVP候補の一人に挙げられるはずだ。しかし、現実はかなり厳しい。ウエストブルックはトリプルダブルを平然と達成しているかのように見えるが、その間に2回もトレードされており(ロケッツ、ウィザーズへトレード)、トリプルダブルに特別な価値がないことを示唆しているようにも見える。さらに悪いことに、彼を中心に据えるべき選手ではないというようにも見えるのだ。

12月2日、ジョン・ウォールがロケッツに移籍したのに伴い、不満を持つバックコートのスター選手を交換する形で、ウィザーズがロケッツからウエストブルックを獲得した。開幕序盤の1月と2月のウエストブルックのプレイは驚くほど効率が悪く、ターンオーバーは多く、リムに向かって突進する回数も明らかに少なかった。しかしオールスターブレイク以降、ウエストブルックは常にリーグのトップ30のレベルでプレイしており、ウィザーズはウエストブルックとブラッドリー・ビールの両選手がフロアにいるとき、100ポゼッションあたりで+4.4ポイントのネットレーティングを記録している。

ウエストブルックは、1試合平均で5回のターンオーバーを記録しており、フリースローでは、昨シーズンの76.3%からキャリア最低の62.8%へと落ち込んでいることに懸念があるが、ウエストブルックの絶え間ない推進力は、ウィザーズをガードしにくくしているのも事実。彼の存在は、トレードが成立した際に一部の人々が推測したような、ビールの得点を妨げることにはつながっていない。ビールは、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーとリーグの得点王を懸けて激しく争っている。

統計のジャスティン・クバトコ氏の調査によると、ウエストブルックは3月・4月に、1968年の2月・3月のウィルト・チェンバレン以来、連続して300点、150アシスト、150リバウンド以上を記録した初めての選手となった。ウエストブルックは、リングを持たないこともあり、決して万人受けする選手ではない。しかし、トレードの機会が訪れた時、ブルックスHCはウィザーズで再びタッグを組めるよう強く働きかけた。ブルックスHCは、ウエストブルックがオクラホマシティーで過ごした7シーズンのほぼすべてを通して、彼を指導していた。

ブルックスは「リバウンドこそ、最も信じられないんだ」と語る。「あのリバウンドは本当にすごい。彼にはそのコツがあるんだ。誰が目の前にいようと、彼は常にあと一歩のところにいる。彼の意志、運動能力、競争心は、我々のチームに必要なものだと思う」。

たった190cmの男が平均で11リバウンド? 彼のような選手は、私の世代でも子どもたちの世代でも、二度と見ることはできないだろう」。■

JJ
I Stan Basketball. / Started watching NBA since 2003 / A Big Fan of LeBron & Lakers / An Alumnus of University of Tsukuba / An Editor / A Blogger

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